【弁理士の年収の現実】仕事がない?1,000万円以上?気になる噂を解説 

更新日:2023/08/18
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知財・特許

【弁理士の年収の現実】仕事がない?1,000万円以上?気になる噂を解説 

管理部門・士業の転職

弁理士の年収は、平均すると700~800万円といわれていますが、事務所の規模や勤務先の職位などで変動します。
また、どのような専門性を身につけているか、あるいは営業力があるのかによっても、おそらく年収は変わってきます。
この記事では、弁理士が稼ぎを増やすためにはどうすればよいかを見ていきましょう。


この記事のまとめ

・弁理士の平均年収は「中堅以上特許事務所」が最も高い

・特許事務所は歩合制を採用しているところが多く、事業会社は着実に給与が上がっていく

・独立開業して成功するには「専門性」と「営業力」が鍵となる

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弁理士は仕事がない?

弁理士に対しては、仕事へのニーズがないから資格を取得しても恩恵が少ない、という噂・イメージがもたれることがあります。その理由として以下の点が挙げられます。

弁理士間での競争が激化し、仕事がなくなる

そのような印象が生じる理由の1つが、弁理士業界における競争の激化です。
弁理士の試験には受験制限が設定されていません。そのため、職歴・学歴に関係なく、資格試験の勉強を重ねて合格さえすれば、専門家として活躍できるチャンスがあるわけです。

ところがその門戸の広さゆえに、弁理士という資格を取って職・収入を得ようとする人が多く、弁理士への登録者数は年々増加傾向にあります。その一方で、業務のデジタル化が進み、かつてほど人手が必要なくなりつつあるという状況が発生し、弁理士はやや供給過多となっています。

もともと弁理士は、特許の出願を希望する発明者・企業からの依頼を受け、出願のための各種手続き・その後の対応を行うのが主な業務です。出願に関連する業務には書類作業が多く、ペーパーレス化が進み効率化が求められる中で、弁理士の中でも競争が激化しています。優秀な弁理士は年収数千万円を得るケースもありますが、一方で仕事がないために年収が200万円程度にとどまっている弁理士もいます。

というのも、弁理士の業務は官公庁と密接に関係しているからです。官公庁は公的サービスを提供する機関のため、どんなに不景気になっても安定した取引先となってくれます。弁理士が特許出願という「独占業務」を有している限り、人によって収入の差はあるものの、弁理士自体の仕事がなくなることはないでしょう。

また、弁理士試験の合格率は、令和元年度試験において8.1%と1割未満という結果です。この低い合格率を突破した人に独占業務が与えられているわけですから、本人の努力次第で活躍の場は大きく広げられるでしょう。

しかも、弁理士は全体的に高齢化が進んでいるため、これから現役を引退する弁理士の数も増加傾向を示す可能性が考えられ、世代交代によってプレイヤーが減少するため、弁理士人口が要因で、競争が過熱し続けるような状況は考えにくいでしょう。

弁理士の業務はAIによって取って代わられるから将来性がない

弁理士の業務は、将来的にすべてAI(人工知能)の高度化によって実行可能であり、それゆえ弁理士資格には将来性がないとの声もあります。実際、AIの開発スピードは速く、現時点でもすでに、イラストレーターやライターなどAIによって仕事がなくなると懸念されている職種は多いです。
弁理士も書類仕事がメインであるため、AIが執り行う業務としては適している部類に入ります。2015年に日本の野村総合研究所とイギリスのオックスフォード大学が共同研究を行い、AIに代替される恐れがある仕事を提示しています。その中には弁理士も含まれていたため、将来性がないと感じた人も多いかもしれません。

しかしながら、少なくとも日本においては、弁理士はただ機械的に特許の出願書類を作成・提出しているわけではありません。依頼者である発明者・企業と十分な話し合いを行い、出願にかける思いや意図をくみ取った上で出願書類を作るのが通例です。また、出願後に中間処理が発生した場合には、発明者・企業と特許庁との間に入って交渉しなければなりません。こういった点に関してはやはり、AIよりも人間の弁理士の方が優れているでしょう。

また、特許の出願を希望する発明者・企業は、どのような権利を取得すべきか、などに関する知識が不足していることも多いです。依頼者とじっくりと話し合いながら、取得するべき権利を決めていく作業も、人間の弁理士だからこそ行える作業といえます。最近では、対話型AIサービスの性能に社会全体が驚きを見せつつあります。それでも特許出願という高度な専門能力が要求され、さらに人の思いや意図をくみ取ることが求められる特許出願の領域においては、AIのコミュニケーション力では十分に対応しにくい面があるでしょう。

また、日本の弁理士会においても、AI導入による影響を減らすために対策が講じられています。

そうした対策の1つとして有力視されているのが、弁理士によるコンサルティング業務です。コンサルティングはクライアントと対面し、話をしながらクライアントの悩みや不安を聞き出し、その内容を踏まえた上で適切なアドバイスをする必要があります。単純な数値化や経験則ではとらえられない業務も含むため、AIによる代替可能性は低いと考えられています。クライアントの抱えている問題や不安は十人十色です。法則性を見出して通り一遍の手法では進められないので、やはり将来的にも人間が担当せざるを得ないでしょう。

一般的にAIは、同様の仕事はほとんどミスなく迅速に実行できますが、臨機応変な対応、とくに人間の感情や意思を読み取ることは難しいとされています。こうした領域で弁理士がその専門性・人間性を発揮できれば、AIにはない強みを発揮できるでしょう。


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【勤務先×年齢別】弁理士の年収

下の表は、弁理士の勤務先と年齢別の平均年収です。

中堅以上特許事務所 個人特許事務所 事業会社
30代 707万円 454万円 563万円
40代 705万円 678万円 753万円
50代 1001万円 641万円 945万円
平均年収 740万円 596万円 726万円

※ MS-Japanに登録する弁理士のデータを元に算出
※今回は、弁理士が10名以上在籍する特許事務所を「中堅以上特許事務所」、10名以下の事務所を「個人特許事務所」とさせていただきました。
※「事業会社」は主に知財部に在籍されている方を対象としています。

年収が一番高いのは「中堅~大手の特許事務所」で、平均年収は740万円です。50代になると、平均年収は1,000万円を超えています。

次に年収が高いのが「事業会社」で、平均年収は726万円です。
年齢別の年収をみると、30代が563万円、50代が945万円と、年収レンジが大きいのが特徴です。
事業会社においては、年齢が上がるにつれ着実に給与が上がり、さらに役職がつくと大幅に給与が上がるイメージです。
一方で特許事務所においては、歩合制を採用している場合も多く、年齢と比例して給与が順調に伸びていくとは限らないようです。


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弁理士として年収を上げるには?

それでは、弁理士として年収を上げるためにはどうしたらよいのでしょうか?

特許の出願手続きは、高度な知識と経験を要する専門職です。
特許事務所においては売り上げに比例して報酬が決まる歩合制を採用しているところが多いため、専門性と処理能力を高め、多くの件数をこなすことで、年収アップが見込めるでしょう。

また、専門性を高めるにあたって注目すべきなのは、「PCT国際出願」です。
下のグラフは、特許出願件数の推移およびPCT国際出願件数の推移です。

特許出願件数の推移

特許出願件数の推移

PTC国際出願件数の推移

PCT国際出願件数の推移

出典:特許庁『特許行政年次報告書2022年版』

上のグラフによれば、特許の出願件数は、近年では横ばいです。それに対して国際出願の件数は、コロナ過の影響を受ける2020年までは増加傾向にありました。

近年、経済と技術が国際化しています。そのため企業は、海外で製品を販売するにあたり、模倣品から自社製品を保護することを目的として、海外の特許を取得する傾向が強まっています。
この傾向は、これからも続くと見込まれます。国際出願の経験と実績を積むことは、弁理士としての年収を高めるためには有効だといえるでしょう。


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弁理士として年収1,000万円を目指すには

弁理士として年収1,000万円を目指すには

弁理士として年収1,000万円を目指すためにはどうすればよいかを見てみましょう。

独立開業する

弁理士が年収1,000万円を目指すための方法として、まず挙げられるのが独立開業することです。独立して波に乗れば、年収3,000万円を超えることもあります。

弁理士として独立開業し成功させるには、「専門性」を持つことが大切です。
独自の専門性・強みを持つことは、他の特許事務所と差別化し、数多くある事務所の中で顧客から選ばれるために重要になってきます。

また、独立して顧客を獲得していくには、「営業力」も必要です。
所長やパートナーが営業して獲得した案件を処理するため、一般に特許事務所に勤務する弁理士は、営業経験がありません。
どのように営業をすればいいのか、わからない弁理士も多いでしょう。
特許事務所の仕事は、税理士など他の士業から得られることも多いため、士業の集まりに積極的に参加するなどして人脈を築くことは大切です。

特許事務所で昇進する

独立せず、勤務している特許事務所で昇進を重ねることも、年収1,000円を目指すもう1つの方法です。
特許事務所の規模によっても異なりますが、パートナーに昇進すれば、年収は1,000万円を超えるといわれています。

また、事務所によっては、会長やオーナーなどが別にいるために、独立開業するのではなく、昇進を重ねた末に所長になるケースもあります。
その場合にも、年収は1,000万円を超えるでしょう。


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弁理士の将来性

弁理士の将来性は、以下の点において高いと考えられます。

専門性の高い業務内容であり、異業種からの参入が難しい

特許、実用新案などを特許庁に際に弁理士が行う申請業務は、弁理士資格の有資格者のみが認められた独占業務です。近年では弁理士登録をする弁護士も増えており、ダブルライセンスを持っている人も多いですが、弁理士の業務と弁護士の業務はまったく異なり、弁理士としての実務経験は弁理士業務においてのみ蓄積できます。

また、弁護士は法学部出身者が大多数を占めるため、大学・大学院などでバイオ、電気電子、機械等の理系分野を専攻していたわけでなく、技術理解も必ずしも深いとは言えません。

弁理士として活躍するには、弁理士として専門知識、実務経験を蓄積していくことが不可欠です。独占業務を有するというその性格もあり、異業種の人がにわか仕込みの知識で参入することは難しいのが実情です。

スタートアップ企業からのニーズが多い

スタートアップ企業とは、創業2~3年の急成長中のベンチャー・中小企業のことです。近年では、社会のIT化・デジタル化が急速に進む中でビジネスチャンスも多数発生しています。斬新なアイデアや技術を活かして起業し、成長を果たすスタートアップ企業が増えています。こうしたスタートアップ企業は、既存企業が未開拓・未開発の製品分野で勝負する必要があり、そのためには特許出願の専門家である弁理士の協力が欠かせません。

大手・老舗の大企業であれば、企業内に「知財部」を設けて内部で人材育成を行っているケースもありますが、スタートアップにはそのような知財部門を設置する時間も余裕もありません。実際には弁理士事務所の力を借りることでニーズを満たすのが通例です。
現在ではスタートアップ企業の支援に特化した弁理士事務所も多数登場しつつあり、経済活性化のため、特許庁も、特許の審査を早期に行うなど、積極的にベンチャー支援を行っています。いわば国と日本経済が特許の専門家である弁理士を必要としており、その重要性は将来的にも大きく変わらないでしょう。

一般企業でのニーズも増えている

企業内に知財部門を設けている企業でも、弁理士の資格を持つ人材へのニーズが高まりつつあります。弁理士は転職市場において引く手あまたですから、人材をずっと定着させておくことは非常に難しく、またすでに企業内にいる知財部門の人材にはない知識・経験を有する弁理士を、積極的に採用しようとする企業も増えているのです。
かつて弁理士というと、資格を取ると弁理士事務所に就職するのが通例でしたが、近年では企業の知財部門に採用されるケースも増加しつつあります。

若手へのニーズが高く、長く働ける

弁理士業界は中高年以上の世代が多数を占め、若手の弁理士を望む声が多いです。弁理士試験合格者の多くが30代後半であり、20代~30代前半の人は転職市場で完全に売り手市場の状況です。若いうちに資格を取れば、自分が希望する事務所・企業で働くための転職をしやすいといえます。しかも若手のうちから高収入を得られることも多いです。とくに特許事務所では出来高制、成果報酬制にて処遇を決めていることも多く、実力次第で年収を上げやすいといえます。

一方で弁理士は、長く働くことも可能です。特許事務所などでは60~65歳の定年が主流ですが、定年後も再雇用や嘱託雇用されるケースも多く見受けられます。しかも独立、開業も可能であるため、若いうちから資金をためて、将来的に独立するという人生設計も立てられます。

【関連記事】
弁理士に将来性はあるのか。需要と供給から今後を予測


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まとめ

弁理士は弁護士と相性が良いとされ、弁理士資格を持つ人が、司法試験の合格を目指して勉強を開始するというケースは多いです。特許関連の訴訟を扱う場合、弁理士で培った経験や知識を弁護士業務に活かすこともできます。

また近年では海外進出を図る企業が増え、それに伴って日本国内から外国に対して特許を出願することへのニーズが高まりつつあります。
そのため、弁理士として活躍する上では、英語力をもっているに越したことはありません。外国に向けて特許出願する場合は、英語による書類作成が不可欠です。転職活動をする場合にも、英語で出願できるという点は企業の知財部門、特許事務所のどちらにおいても高評価を受けられるでしょう。

最近では外国企業から日本への出願も増加しつつあり、高度な英語力があれば、こうした外国資本の企業において活動することも可能です。この場合、特許申請は日本語ですが、外国資本企業の知財部門では英語が日常会話となるので、専門用語の読解・文書作成のみならず、英語での会話力も必要です。

管理部門・士業の転職

<参考>
特許庁『特許行政年次報告書2022年版』
特許庁『PCT国際出願制度の概要』

この記事を監修した人

大学卒業後、食品メーカー営業を経て2005年MS-Japan入社。企業側営業担当を1年半経験し、以降はカウンセラー業務を担当。若手中堅スタッフの方から、40~50代のマネージャー・シニア層の方まで、年齢層問わず年間500名以上をカウンセリングさせていただいています。
企業管理部門全般~会計事務所など士業界、会計士・税理士・弁護士資格者まで弊社の特化領域全般を担当しています。
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