弁護士の未来像は、こうあるべき!
弁護士の未来像は、こうあるべき!
]長い間、弁護士は、黙っていても法律トラブルで悩んでいる人がやってきて、仕事には困らない状況が続いてきました。しかし、司法制度改革で弁護士人口が急増したことによって、顧客獲得競争が激しくなり、弁護士であるだけではアドバンテージにならない時代になっています。未来の弁護士像とはどうあるべきなのでしょうか。
今の弁護士を取り巻く状況とは
平成の初めごろには、司法試験の合格者が年間500人程度で推移しており、それに対して、司法試験の受験者数がピーク時には4万人を優に超え、最難関の国家試験という名をほしいままにしていました。
しかし、司法制度改革の一環により、司法試験は原則として法科大学院の修了者(法務博士)であることが受験の条件となり(例外的に予備試験の合格者は受験可)、しかも司法試験の合格者数も年間1,500人から2,000人程度となっています。そのことから、司法試験そのものが昔ほどの難関でなくなった一方、法曹人口が急増しています。
ただし、新人の裁判官や検察官の枠はそれほど増えていないことから、そのまま弁護士の急増に繋がっているのです。
また、弁護士の稼働は、首都圏や大阪周辺、名古屋周辺といった大都市に偏在しており、こうした大都市での新規顧客獲得はなかなか難しくなっています。法律事務所の経営が安定しやすい大企業の顧問枠はベテランの弁護士が握っており、若い弁護士が新たに参入することも至難の業です。
顧客獲得競争は弁護士業界のみで済むわけでもありません。司法書士の一部は簡易裁判所の法廷に立つことができますし、行政書士も公的書類作成の一環でクライアントの法律相談に乗ることがあります。社会保険労務士は労働法に精通していますし、弁理士は知的財産の専門家ですので、弁護士の職域とも重なります。
これからの弁護士に求められる能力とは
このような時代に、弁護士が事務所で待ちの姿勢でいる「殿様商売」をしているわけにはいきません。法律知識や交渉スキルだけを磨くのでなく、より一層、潜在的な顧客を自ら見つけ出して、契約に繋げていく「営業能力」が求められるようになっています。
ただし、弁護士が取り扱うのは、離婚や相続、交通事故といった必ずしも前向きとは言えない出来事です。つまり、法律事務所の経営を安定させるためには、ある意味で「不幸な人を積極的に探す」という一面があります。そのため、品位のある営業手法をとる必要があります。
アメリカでは、弁護士のことを「アンビュランス・チェイサー(救急車を追いかける人)」と揶揄するジョークがありますが、仕事を積極的に取ろうとすればするほど、人の不幸に付け込むような印象を与えてしまいます。とはいえ、弁護士資格に基づく知識や経験をもってクライアントを導くことが求めらるため、下手に出ることで成り立つものでもありません。
弁護士の広告も解禁されていますが、表現について厳しい規定がある状況です。
ですから、弁護士の新規の仕事の取り方は大変難しいところです。テレビなどのメディア露出を増やして知名度を高めたり、SNSやブログでの発信を積極的に行ってネット上で専門性や人柄などをアピールするのが、「敬意を保ちながら仕事を取る」王道だといわれています。
IT化が進む中で弁護士が担う役割とは
日本政府も「司法のIT化」に本格的に乗り出そうとしています。極めて保守的な日本の裁判所ですら、インターネット技術を前提にした手続きの整備を行うのですから、これからの弁護士がITに疎いのは、極めて高い専門性や交渉力など、よほどの特殊能力を持っていない限り、通用しないでしょう。
法律トラブルの中にもITが当然のように入り込む時代です。相談者の話の内容を理解できる程度の基本的な素養は身につけておく必要があります。
世の中のIT化が進展するにつれて、個人の発信力も高まるため、名誉毀損や著作権侵害などの問題が、より「身近」になっています。よって、今までの常識が通用しないことを前提に、新たな視点を常に持ちながら相談に乗る姿勢が必要になります。
また、高度なIT化が、都市部と地方とをオンライン会議システムなどで結ぶことができるため、弁護士の偏在問題を救うともいわれています。離れた場所からも法律相談などのコミュニケーションをとることが可能となるためです。
今後、弁護士の脅威になりうるものとは
AI(人工知能)が進化するにつれて、弁護士のような知的業務を行う職業の担い手は、仕事の環境が大きく変化することが確実視されています。
定型化された法律相談や法律・判例などのリサーチは、コンピュータのほうが速く正確に回答を出すことができるようになります。つまり、誰がやってもアウトプットがほぼ同じ業務から、弁護士は解放されますし、一方で定型処理の割合が多かった弁護士は世間からの需要が無くなる脅威の時代へと進んでいきます。
まとめ
弁護士であるだけで尊敬され、お金を稼げるような時代はとうの昔に終わっています。一方で、時代の空気を読みながら自分の資格を積極的に活かせる弁護士にとっては、これからますます面白い時代になっていきます。「法廷に立つ」「交渉をする」という当たり前のイメージすら払拭するぐらいの、新たな弁護士像が求められています。
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