司法修習生の給料は?必要な手続きや税金・社会保険に関しても解説

更新日:2024/01/16
弁護士

司法修習生の給料は?必要な手続きや税金・社会保険に関しても解説

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司法試験に合格してから司法修習に入る際には、司法修習生がいくら給料をもらえるのか不安になる人が多いのではないでしょうか。
この記事では、司法修習生の給料に関する仕組みである「給費制」とは何か、一度廃止されて復活した新しい制度ではいくら給付が受けられるのかを、手続き方法を交えて解説します。

司法修習生「給費制」とは

司法修習生は全国各地でフルタイムの司法修習を受けることとなります。
修習専念義務がありますので、アルバイトもできません。

その司法修習生が、1年間の司法修習のあいだ無給のままでは、生活が立ち行かなくなる心配がでてきます。
そこで、2011年までは、司法修習生に対して給料を支払う「給費制」が適用されていました。

司法修習生の給費制においては、月額20万4,200円の給料、および地域手当、扶養手当が支給されていました。
また、通勤手当や住居手当などもあわせて支給されていました。


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「貸付制」から「給費制」の復活 新制度は13万5,000円

この司法修習生の給費制は、2011年に、政府の財政緊縮政策の一環として廃止されました。
そのかわり、月額18万円~28万円の貸付を受けられる貸付制へと移行しました。

しかし、貸付を利用すると、司法修習のあいだの1年間で、約300万円の借金を背負うことになります。
さらに、司法修習生のなかには、法科大学院の在学中に奨学金を借りている人もいます。
貸付金と奨学金の合計額が1,000万円を超える人も珍しくない状況が発生し、給費制の廃止により、若手法律家はスタートの時点で大きな負担を背負うこととなりました。

修習専念義務を負うにもかかわらず無給となるのは、国内の他の制度や諸外国の制度と比較しても極めて異例といえることです。
また、給費制が廃止されて以降、法曹志望者が激減し、経済的理由で法曹への道をあきらめる人も多くいました。

そのような状況をうけ、給費制の復活を望む声が強くありました。

そこで、2017年に「修習給付金制度」として、司法修習生の給費制が事実上復活することとなりました。
新制度における給付金は、月額13万5,000円です。また、住居費がかかる場合は、3万5,000円を上限に住居手当も加算されます。

「給費制」の課題

以上のような経緯をたどり復活することとなった給費制ですが、まだ問題がすべて解決されたわけではありません。
残された課題として、まず、給付額の問題があげられます。
司法修習生は、全国各地で司法修習を受けるために引っ越しをしたり、アパートの敷金・礼金を払ったりなどの初期費用を負担しなければなりません。
その際に、13万5,000円の給付金と3万5,000円の住宅手当で十分であるかどうかは、今後さらに検討されなければならないでしょう。

また、給費制が中断されていた6年間のあいだに司法修習を受けた「谷間世代」の人たちをどう救済するのかも、残された課題としてあげられます。
今回の新制度導入にあたっては、谷間世代の救済策は何ら示されてはいません。


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給付金を受けるための手続き

司法修習期間中に給付金を受けるためには、届出書に必要事項を正しく記載して手続きを行わなければなりません。
修習に入る期によって手続きの方法が異なるケースもあるため、手続きに必要な書類や正確な手続き方法は「最高裁判所ウェブサイト」を確認してください。

修習給付金を受けるための基本的な手続き方法を以下で解説します。

給付金の受け取りに必要な書類は、主に「振込口座届出書」「住居届」「移転届」の3種類です。
状況に応じて提出先や提出時期が異なり、提出期限に間に合わないと給付金が支給されないため注意が必要です。

修習生給付金のうち「基本給付金」の手続きは、採用選考の申し込みの際に行います。
所定の「振込口座届出書」に記載し、経理課経理係に提出して、振込口座を届け出ます。
振込先に指定できる金融機関は制限されているため、可能な金融機関のなかから振込先口座を選んで記載し、提出すると手続きが完了です。

「住居給付金」の申請手続きは、住居給付の要件をすべて満たしている場合、給付の支給要件が整った日から7日以内(初日不算入)に必着で総務課人事係まで書類を提出しなければなりません。
必要書類は、所定の「住居届」と、「賃貸借契約書全頁(写)」です。
賃貸借契約書の手配が期日に間に合わない場合には、先に住居届を提出します。
賃貸借契約書は用意でき次第、速やかな提出が必要です。

「移転給付金」は、移転給付の要件を満たした場合に、所定の「移転届」を7日以内に必着で経理課経理係へ提出しなければなりません。
郵送で提出期限に間に合わない場合には、期限までに必ず経理課経理係の問い合わせ先に連絡しておきます。


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税金・社会保険費用は負担する?

修習生給付金は課税対象(所得税・住民税)

修習生が給料の代わりに受け取る修習生給付金は、所得税法上の給与所得ではなく雑所得に該当するため、所得税と住民税の課税対象になります。
ただし、給付金のうち移転給付金だけは非課税で、所得税などの税金がかかりません。

基本給付金と住居給付金は源泉徴収されないため、自分で確定申告を行います。
給付金は、給与とは異なり交通費などの必要経費が認められず、確定申告時に控除できる経費はありません。

社会保険関係

修習生給付金を受け取っている期間の社会保険は、国民健康保険に加入して、国民年金の第1号被保険者になります。
給付金の受給期間中は、月額13万5,000円の基本給付金を受け取ります。
社会保険の扶養に入るには、年間所得が106万円未満もしくは130万円未満でなければならないため、所得制限に収まらず家族の社会保険の扶養に入ることができません。
これまで家族の社会保険制度の扶養に入っていた場合には、加入している社会保険制度から外れて市区町村の窓口で国民健康保険と国民年金に加入する手続きを行います。

これまで自分が勤めていた勤務先の社会保険に加入していた場合でも、家族の扶養には入れないため同様に国民健康保険、国民年金に加入し直します。
もとから国民健康保険と国民年金に加入していた人は、そのまま変更が不要で同じ保険・年金制度への加入を継続します。


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司法修習生の生活

司法修習生の生活

司法試験に合格すると、その年の11月から約1年間、司法修習を受けることになります。
1年のうち10ヶ月間は、全国にある裁判所に一人一人が配属され、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護、およびカリキュラム選択型の修習をそれぞれ2ヶ月ずつ受けます。
修習を受ける場所は、最高裁から指定されます。
事前に第6希望までの希望をだすことができますが、全く希望しない場所に指定されることもあります。

  • ・民事・刑事裁判修習
     裁判官による指導のもと、具体的な裁判に関わり、裁判の傍聴や原告・被告の主張の整理、判決書の草稿作成などを行います。
  • ・検察修習
     検察官の指導のもと、被疑者の取り調べを行うなどして事件の捜査を行い、起訴の判断や証拠の準備などを行います。
  • ・弁護修習
     弁護士事務所に配属され、弁護士の指導のもと、法律相談や被疑者・被告人との接見、裁判期日への出席、書面の作成などを行います

司法修習の残り2ヶ月間は、埼玉県和光市にある司法研修所に集められて修習を受けます。
地方の修習生は、司法研修所内にある寮に入寮できることとなっています。
ただし、寮には定員がありますので、全員が入ることはできません。
誰が入寮できるかは抽選で決められ、抽選に外れた地方の修習生は、司法研修所の近くにアパートを借りなければなりません。

司法修習のあいだ、修習生は、公務員に準じた地位として取り扱われます。
裁判所の職員と同様に、朝9時に出勤し、定時であがるまで丸1日勤務をします。修習に専念する義務があり、アルバイトなどは禁止となります。


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司法修習後にかかる費用

日弁連・弁護士会への登録費

司法修習終了後に弁護士になる場合、勤務する地域の弁護士会と日本弁護士連合会(日弁連)両方の会員に登録しなければなりません。
登録料は、弁護士として開業するために必要な初期費用です。一度支払ったらあとから同じ支払いが生じることはありません。

日弁連への登録には、名簿登録料3万円(その年の修習終了者は1万円)と登録税6万円がかかります。
また、弁護士会への入会金は地域によって、3万円~60万円ほどがかかります。
司法修習後、弁護士として企業に入社する際には登録して9月~10月頃に納付するケースが多いため、入社する企業と負担額を話し合っておくことが大切です。

日弁連の会費

弁護士登録をしたあとには、弁護士の仕事を続けるため日弁連に毎月の一般会費と特別会費を支払います。
日弁連の一般会費は、2023年時点では月額1万200円(司法修習後、2年の間は月額5,100円)です。
一方特別会費は月額2,100円で、司法修習後などに支払金額が変わることはありません。

弁護士会の会費

弁護士会の会費は、勤務する地域の弁護士会によって金額が異なり、2023年時点では月額が1万2,000円~6万円ほどかかります。
企業に勤めている場合には、会費を企業が負担しているケースが多くみられます。
司法修習が終了してからしばらくの間は会費負担を軽減している弁護士会もあるため、詳しくは地域の弁護士会に確認してください。

参考元
法務省


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まとめ

司法修習生は、司法修習の期間中アルバイトなどができないため、生活に必要な給料の代わりに給付金が支給されます。
従来は給費制によって支払われていた給料が一度廃止され、貸与制度を経て現在の「修習給付金制度」が導入されました。
給付金制度では、正しい手続きを行うと「基本給付金」「住居給付金」「移転給付金」が受け取れます。
給付金からは税金や社会保険関係の費用も支払わなければなりません。
司法修習後に弁護士として活動を始める場合には、弁護士会や日弁連に登録して会費を納める必要もあります。
法曹を目指す方は、これらの費用がかかることを覚えておきましょう。

この記事を監修した人

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
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