なぜ「弁理士はやめとけ」と言われるの?5つの理由とメリット、平均年収など

更新日:2023/11/30
資格
弁理士

なぜ「弁理士はやめとけ」と言われるの?5つの理由とメリット、平均年収など

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弁理士は、特許や知的財産を扱う専門家です。国内の難関資格としても知られていますが、「弁理士はやめとけ」といった声もあります。弁理士を目指そうかどうか迷っている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、「弁理士はやめとけ」と言われる理由や、弁理士の平均年収・メリットなどを解説します。キャリアパス別の、求められる弁理士実務経験など、役立つ情報もあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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「弁理士はやめとけ」と言われる理由

「弁理士はやめとけ」と言われる理由として挙げられるのは、主に以下の5つです。

  • ・弁理士資格保有者が増えている
  • ・特許の出願件数が横ばい傾向にある
  • ・2~3年の下積み期間が必要である
  • ・ブラック特許事務所がある
  • ・精神的なプレッシャーが大きい

それぞれの理由を詳しく解説します。

弁理士資格保有者が増えている

「弁理士はやめとけ」と言われる主な理由として挙げられるのが、弁理士資格保有者が増えている点です。日本弁理士会が運営している弁理士の検索サイト『弁理士ナビ』で検索をしてみると、弁理士資格保有者は2023年11月20日時点で1,4697人です。

同じく日本弁理士会が発行している『弁理士白書』によれば、2013年時点では1,0171人だったため、約5,000人増加していることが分かります。

弁理士資格保有者の増加により、特許出願や商標登録などの業務を行う市場が飽和傾向にあるといわれています。新たに資格を取得した弁理士が、独立して開業する際のハードルが高まっていると感じる人もいるようです。弁理士の数が増えると、同じ業務を行う中での競争が激化し、業務獲得のための価格競争や、クライアント獲得のための営業活動が増える傾向があります。

特許の出願件数が横ばい傾向にある

弁理士資格保有者が増加している一方で、特許の出願件数が横ばい傾向にあるのも、「弁理士はやめとけ」と言われる理由です。

過去数十年にわたり、日本の経済成長や技術革新の波に乗り、特許出願件数は増加していました。しかし近年は、国内の研究開発活動の変化や経済状況、国際的な特許戦略の変動といった影響で、出願件数が横ばいもしくは微減の傾向にあります。こうした状況が改善されるためには、経済の復調や政府による対策といったマクロ要因が重要で、弁理士個人が何とかできる問題ではありません。
特許庁によれば、特許出願件数の推移は以下の通りです。

出願年 特許出願件数
2013年 32万8,436件
2014年 32万5,989件
2015年 31万8,721件
2016年 31万8,381件
2017年 31万8,481件
2018年 31万3,567件
2019年 30万7,969件
2020年 28万8,472件
2021年 28万9,200件
2022年 28万9,530件

表からもわかるように、ここ10年の特許出願件数は減少傾向です。2013年と2022年の件数を比べてみると、約4万件も減少しています。

弁理士の主要な業務の1つが、特許出願の手続きや審査応答です。特許出願件数が横ばい傾向にあると、新たな業務の獲得が難しくなる可能性があります。特に新規に開業する弁理士や、経験が浅い弁理士にとっては大きな課題となるでしょう。

2~3年の下積み期間が必要である

「弁理士はやめとけ」と言われる理由として、2〜3年の下積み期間が必要である点も重要です。弁理士資格取得者は、独立開業する前に、特許事務所や企業の知的財産部門での実務経験を積むのが一般的です。実際の特許出願の手続きや審査応答、クライアントとのコミュニケーションなど、弁理士としての基本的なスキルや知識を身につけます。

2〜3年の下積み期間を経ても、その後のキャリアパスや収入の向上が保証されるわけではありません。この点で、「弁理士はやめたほうがよい」と考える人もいるようです。

ブラック事務所がある

ブラック特許事務所があるのも、「弁理士はやめとけ」と言われる理由の一つです。「ブラック特許事務所」とは、過度な労働時間、低賃金、不適切な人間関係など労働環境が悪い特許事務所を指す俗語です。

もちろん「ブラック企業」という言葉があるように、労働環境が悪い可能性があるのは、特許事務所だけに限った話ではありません。ただし特許事務所は、少人数の組織が多いため、どうしても所長など上位の人間の声が優先されやすい構造になっているのも事実です。ブラック特許事務所では、過酷な労働環境下での業務が続くため、新しい知識やスキルの習得、キャリアアップのチャンスが限られるケースもあります。

しかし、すべての特許事務所がブラックというわけではなく、良好な労働環境を提供する事務所も多数存在します。弁理士を目指す際は、事務所の選び方や情報収集の重要性を理解し、適切なキャリアパスを築くのが重要です。

精神的なプレッシャーが大きい

「弁理士はやめとけ」と言われる理由として、精神的なプレッシャーが大きい点もあります。特許出願や審査応答など、弁理士がこなす多くの業務には、法律で定められた期限が存在します。期限を守ることは絶対的な義務であり、そのためのタスク管理やスケジュール調整のプレッシャーが常に伴い、特に独立開業している場合は、精神的なプレッシャーが大きくなりやすいでしょう。

特許事務所などで働いている場合も、強いプレッシャーにさらされるケースがあります。たとえば事務所の中には、弁理士やスタッフに対して高いノルマや目標を設定するところがあります。業務量や成果を追求するあまり、過度な労働やストレスが生じることも珍しくありません。特に、新人弁理士や弁理士試験の受験生が、このような環境下でのプレッシャーに悩みやすいとされています。


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弁理士の平均年収

弊社MS-Japanは、士業の専門家、特に弁理士をはじめとする専門職や企業の管理部門に特化した転職サポートを行っています。私たちの提供する「MS Agent」は、これらの専門職の方々がさらなるキャリアアップを目指す際のサポートツールとして、多くの方々から高い評価をいただいています。

「MS Agent」を利用した弁理士資格保有者の転職決定年収(2022年4月~2023年3月)は、以下の通りです。

年代 転職決定年収
30代 554万円
40代 725万円
50代 850万円
全体平均 714万円

転職決定年収から、弁理士のおおよその平均年収がわかります。年齢とともに業務経験が蓄積されることで、より複雑な案件・高度な案件をこなせるようになり、年収の上昇につながります。たとえば特許事務所や企業内の知的財産部門でのキャリアを積む中で、管理職やパートナーとしての役職に昇進できます。これに伴い、給与や報酬も大きく上昇するのが一般的です。

年齢とともに、特定の技術分野や産業分野における専門性を深められるのも大きいでしょう。専門的な知識や経験をもつ弁理士は、特定の分野でのニーズがあり、転職によって年収を上げられる可能性があります。


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弁理士として働くメリットはある?

弁理士として働くメリットは、以下の5つです。

  • ・世界規模では特許の出願件数が増えている
  • ・一般的なサラリーマンよりも平均年収が高い
  • ・スタートアップ企業からのニーズが多い
  • ・売り手市場が長く、60代以上でも働くことができる
  • ・キャリアパスが幅広い

それぞれのメリットを詳しく解説します。

世界規模では特許の出願件数が増えている

世界規模では特許の出願件数が増えているため、グローバル志向の人材であれば、弁理士として活躍しやすいといえます。特許庁によれば、PCT国際出願件数の推移は、2013年時点で4万3,075件だったのが2022年では4万8,719件となっています。

PCT国際出願とは、特許出願を複数の国や地域で行う際の手続きを一元化するための制度です。多くの国や地域での特許出願を目指すため、出願書類の翻訳が必要とされます。特に、技術的な内容を正確に翻訳しなければならないため、高度な言語スキルと専門知識が求められます。

一般的なサラリーマンよりも平均年収が高い

一般的なサラリーマンよりも平均年収が高いのも、弁理士として働くメリットです。前述したように、「MS Agent」を利用した弁理士資格保有者の転職決定年収は、平均714万円になります。

上記に対して、国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査」によれば、正社員の平均年収は508万円です。弁理士資格保有者は、一般的なサラリーマンよりも平均年収が高いことがわかります。

弁理士は、特許、商標、意匠など知的財産権に関する専門的な知識をもつプロフェッショナルです。こうした専門性が、企業や個人からの依頼を受ける際の価値となり、高収入につながっています。また弁理士の業務は、技術革新やビジネス戦略の中心であり、需要は安定しています。この安定した需要が、長期的に弁理士の年収の安定性や高さを支えるでしょう。

スタートアップ企業からのニーズが多い

スタートアップ企業からのニーズが多いのも、弁理士として働くメリットです。スタートアップ企業は、新しい技術やアイディアをもっており、これらの知的財産を保護するために特許取得を目指しているケースが見られます。

弁理士は、特許の申請や知的財産権の管理に関する専門知識をもっているため、スタートアップ企業からの需要が高まっています。スタートアップ企業は資金調達の際に、自社の知的財産をアピールポイントとして活用することも多いため、こうした点でも弁理士の役割が重要となるのです。

一般の大手企業や中堅企業も、競争力を保つために新しい技術や製品の開発を進めており、これらの知的財産を保護するための特許申請が増えています。たとえば企業の法務部や知的財産部では、弁理士の専門知識を活用して、特許の申請や管理、侵害リスクのチェックなどの業務を行っています。グローバルに事業を展開する企業は、海外での特許申請や知的財産権の管理も必要となるため、弁理士の役割がいっそう重要です。

このように、さまざまな企業からのニーズは依然として高く、今後もその流れは続いていくと予想されます。

売り手市場が長く、60代以上でも働くことができる

技術革新やグローバル化の進展に伴い、知的財産の保護や管理の重要性が増しているため、弁理士の役割はますます重要となっています。弁理士としてのスキルや経験をもつ人材に対する需要は、今後も継続的に高まると予想されます。

弁理士の仕事は、物理的な労力よりも知識・経験を活かす仕事が中心です。このため、年齢を重ねても人材としての価値が下がりにくいとされています。さらに、独立して開業する弁理士も多く、自分のペースで仕事を続けられます。このような背景から、60代以上でも弁理士としてのキャリアを継続し、活躍できるといえるでしょう。

キャリアパスが幅広い

特許事務所やメーカーの法務部・知的財産部、独立開業など、キャリアパスが幅広いのも弁理士の魅力です。弁理士の多くは、特許事務所でキャリアをスタートし、特許出願の手続きや審査応答、無効審判など、知的財産権に関するさまざまな業務を経験します。

企業内での弁理士は、新しい技術や製品の特許出願、競合他社の特許との関係のチェック、ライセンス交渉など、企業のビジネス戦略に直結した業務を担当します。他にも、知的財産のコンサルティングなど、独立・開業によってスキルを活かす方法もあるでしょう。このように弁理士は、キャリア面でさまざまな可能性があります。


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【キャリアパス別】求められる弁理士実務経験

【キャリアパス別】求められる弁理士実務経験

弁理士として就職、転職する場合どのような職場でどのような実務経験が求められるのかまとめてみました。

特許事務所

実際に特許の申請をしたことがある人、特許以外の知的財産、意匠や実用新案、商標などを特許庁へ出願したことがある人は即戦力として優遇されます。
特許事務所では、弁理士法が規定する業務のうち「特許・意匠・商標などの出願に関する特許庁への手続きについての代理業務」を中心に行い、訴訟関係などは副次的な業務になります(そちらは主に弁護士事務所の仕事になります)。
担当弁理士として知的財産業務に従事し、年俸制で働くことが多いです。経験を積めばヘッドハンティングなどを受けることもあるでしょう。

メーカーの法務知的財産部

企業の社員として、自社の知的財産関連の業務を行います。自社の知的財産について特許庁への申請も一手に引き受けるほか、弁護士資格をもつ社員(社内弁護士)と協力して、自社の知的財産権が侵害されないようにチェックをしていき、場合によっては訴訟を起こすときのサポートをします。

専門的な部署ではありますが、社員ですので、特許事務所で行うような仕事以外の雑務やマネジメント業務を行う可能性もありますし、他の部署へ異動となる可能性もゼロではありません。 特許等の出願経験も重要ですが、会社員としての就職、転職になるので、まったく社会人経験がない30代以上の方は難しいかもしれません。

逆に「ペーパー弁理士」でも前職の職務経歴が加点要素になるならば、優遇されることがあります。どういう人材が欲しいのかはそのメーカー次第で、「弁理士実務のスペシャリスト」が欲しいのか「会社員経験が豊富でマネジメントや他のスキルもあるゼネラリスト」が欲しいのかで就職、転職難易度は異なります。

身分は安定し雇用も維持されます。年俸制ではなく月給制の場合もありますが、弁理士としての「資格手当」などの上乗せもあり、収入面で不安になることは少ないでしょう。歩合給ではなく固定給なのはポイントが高いといえます。

独立開業

弁理士はサムライ資格ですので、独立開業することもできます。しかし、弁護士や司法書士、公認会計士、税理士などよりも、知財関係は一般の方からはなじみがない分野であり、弁理士に依頼をすることはほとんどありません。

つまり、独立開業しても特許事務所のように企業のクライアントを獲得することが不可欠で、そのための営業活動などにも力を入れる必要があります。 理系出身で、工学修士や理学修士をもっている人は差別化できますが、文系出身で弁理士を取得した人は、なかなか強みをアピールしにくいのが現実です。

まず特許事務所や企業弁理士としてクライアントやメーカーとのコネクションを作らないと、独立開業してもやっていくのはなかなか大変です。税理士や公認会計士のように、地域の中小企業からのニーズもないので、「席」は少ないと考えるべきです。

他の資格を取り「合わせ技」での独立開業も検討してみるとよいでしょう。たとえば「弁理士兼司法書士」であればさまざまな公的書類を引き受けることができるポジティブな印象をクライアントに与えられます。


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文系弁理士の就職は難しい?

弁理士では民法を選択し文系受験をする人が2割、残りは理系科目を選択する傾向にあります。「理系+弁理士」ならば、弁理士がマイナス要素にはまずなりません。メーカーや研究開発などに就職して、そこで働いていく中で、弁理士としてのスキルをアピールしていけばいいはずです。

文系の場合、職場によっては弁理士を評価しないところもあります。資格として評価され、知財関連の業務を行いたい方は転職エージェントを利用することで、少しでも弁理士を加点評価する会社とマッチングできます。どの会社が評価するのかは自分ではわかりにくいため、ここはエージェントの力を借りましょう。MS Agentでも、専任のアドバイザーが、求職者の希望に沿った求人をご紹介させていただきます。


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まとめ

弁理士資格保有者は増加傾向にある一方で、特許の出願件数が横ばいになっていることから、「仕事がない」「弁理士はオワコン」「弁理士はやめとけ」と考える人もいるようです。2〜3年の下積み期間が必要だったり、ブラック特許事務所の存在があったりと、弁理士を取り巻く環境は複雑です。

「MS Agent」を利用した弁理士資格保有者の転職決定年収の平均は714万円で、日本の正社員の平均年収(508万円)と比べると高水準です。スタートアップ企業からのニーズが多く、多様なキャリアパスを描けるなど、弁理士として働くメリットも多くあります。「弁理士=勝ち組」と考えるのは安易ですが、世間的には需要の高い仕事と考えてよいでしょう。

弁理士のキャリアを描く際に重要となってくる要素は、「グローバルでの活躍を志向しているかどうか」です。世界規模では特許の出願件数が増えており、英語力を活かせる環境が整っています。英語力の高い弁理士は、これからも高い需要が期待できるでしょう。

弁理士として就職・転職する場合は、実務経験が最も重要です。たとえば特許事務所の場合、実際に特許の申請をしたことがある人や、知的財産・意匠・実用新案・商標などの出願経験をもっている人は、即戦力として活躍できるでしょう。

実務経験や実績に自信がない人は、社会人経験や他のスキルも合わせて、メーカーなど企業の知的財産部門を目指すのがよいでしょう。 独立開業はコネクションがないと厳しいことが多く、他の資格以上に一般の方にはなじみがない仕事である点には注意が必要です。

弁理士資格保有者として転職を考えている場合は、転職エージェントを積極的に活用しましょう。MS-Japanは、経理・財務・人事・総務・法務・会計事務所・弁護士・公認会計士・税理士などに特化し、転職に関するサポートを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した人

大学卒業後、新卒でMS-Japanに入社。
法律事務所・会計事務所・監査法人・FAS系コンサルティングファーム等の士業領域において事務所側担当として採用支援に従事。その後、事務所側担当兼キャリアアドバイザーとして一気通貫で担当。
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