2018年10月01日

税理士登録をしている弁護士の人口と期待される役割とは?

管理部門・士業の転職

弁護士が、税理士試験を受験しなくても、税理士登録できるのは、業界の常識といえるでしょう。しかし、実際に弁護士が税理士としても十分にクライアントの期待に応えられるかは、疑問視する方もいます。
なぜ、弁護士は無試験で税理士登録することができるのでしょう。そして、税理士を兼ねている弁護士は日本にどれぐらいいるのでしょうか。

弁護士になったら税理士資格の取得もできる

弁護士法3条2項は、「弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる」と定めており、税理士法3条3号は、「弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。)」は「税理士となる資格を有する」と規定しています。

弁護士だけでなく、弁護士登録はしていなくても、司法試験に合格して司法修習を終えている人であれば、税理士法3条にいう「弁護士となる資格を有する者」です。よって、税理士試験を受験しなくても、税理士登録を行い、税理士の肩書きで業務を進められます。

このほか、公認会計士も税理士試験を受けずに税理士登録が可能です(税理士法3条4号)。
ただ、公認会計士の場合は、会計の高度な知識はもちろん身につけていますし、公認会計士試験で租税法も必修科目となっています。公認会計士試験は、受験難度が税理士試験を上回っていますから、公認会計士が無試験での税理士登録が可能だとしても、それほど疑問に思う人は少ないでしょう。

ただ、司法試験では会計論はもちろん、租税法も問われません。にもかかわらず、なぜ弁護士が税理士登録を行えるのでしょうか。

税理士法が制定されたのは、昭和26年(1951年)で、まだ日本が敗戦の傷跡から立ち直れていない段階です。この段階から税理士制度を立ち上げるにあたって、世間の需要に対して税理士の人数が足りず、しばらくの間は供給が追いつかない事態が想定されました。そこで、戦前から存在していた国家資格者の弁護士に、税理士業務を託したのです。

当時から司法試験は難関でしたから、学習能力の高い人材なら、新たに税法や会計も身につけて、税理士業務もこなしていけると期待されていました。その名残が、税理士人口が過剰になったともいわれる現在まで連綿と続いているのです。

実際に、税理士業務もやっている弁護士はいるのか?

日本税理士会連合会の調べによりますと、2018年3月現在で、税理士登録をしている弁護士は全国で637名となっています。日本の税理士人口は7万7千人を超えていますので、全体の1%にも満たない計算です。弁護士の業界内では、弁護士兼税理士の占拠率は、約1.6%となります(2017年度の弁護士人口 3万8980人をベースとした場合)。

弁護士兼税理士は、法律事務所だけでなく「法律会計事務所」を名乗っているところに所属している可能性が高いです。もっとも、弁護士の専任者が、他の税理士や公認会計士らと組んで、法律会計事務所を経営しているケースもありますので、一概にはいえません。

具体的にどんな業務をやっている、できるのか?

税理士登録をしている弁護士は、たとえば、弁護士として相続に関する相談を受けた場合、そのクライアントから相続税に関する納税相談や申請代行などを依頼されても、切れ目なく対応することが可能です。

また、顧問契約を結んでいるクライアントの企業に税務調査が入った場合、一般的な顧問税理士であれば、税務署職員に対して真っ向から不服を述べて争うケースは少ないです。しかし、税理士を兼ねている弁護士なら、国を相手取って税務訴訟を提起して争うこともできます。クライアントにとっては頼りになる存在といえます。

ただ、税理士がカバーする税法の範囲が広いので、これを弁護士がすべてマスターするのは至難の業です。税法のうち、得意分野やクライアントからの需要が高い特定の分野に絞って、税理士としての任務を行う場合が多いです。

転職でアピール材料になる?

法律会計事務所や、税金に関する法律相談が寄せられることがある法律事務所では、税理士を兼務する弁護士は即戦力として求められることがあります。よって、転職活動では大きなアピールポイントになります。ただ、それ以外の一般的な法律事務所では、さほど売りにならないと考えられます。

では、組織内弁護士(インハウスローヤー)の転職活動についてはどうでしょうか。
その弁護士が税理士登録を行い、実際に税務案件の経験を積んでいる場合には、そのような「税理士兼弁護士」人材を求める企業もあると考えられます。

税理士と弁護士を2人雇用するよりも、弁護士兼税理士を1人雇用したほうが、一般的には人件費の節減に繋がるからです。また、税務調査で税務署職員から厳しい指摘をもらいがちな企業では、その指摘に対して的確に反論できる弁護士資格者に期待する場合もあるでしょう。

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まとめ

税理士登録をしている弁護士は、70人に1人ぐらいの割合でいますが、珍しい部類には入るといえます。東京や大阪などの大都市圏に多いですが、税理士や弁護士が少ない地方で開業すると、地域住人や地元企業の印象に残りやすく、大いに貢献できるのではないでしょうか。

<参考>
佐藤茂税理士事務所 5.全国の税理士の人数と税理士資格を取得した方法・税理士試験受験者と合格者の推移
日本弁護士連合会 基礎的な統計情報(弁護士白書2017年版等から抜粋)

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