弁護士キャリアを考える~大手法律事務所と個人法律事務所の比較~
弁護士キャリアを考える~大手法律事務所と個人法律事務所の比較~
法律事務所には、100人を超える組織を構築する大手もあれば、個人経営のところもあります。弁護士として転職を目指すとすれば、どちらのほうがいいのでしょうか。それぞれの特徴を紹介しながら考察してまいります。
大手事務所の特徴
大手の法律事務所といえば、東京都内では数百名の弁護士が所属する事務所もあります。
「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」「長島・大野・常松法律事務所」「西村あさひ法律事務所」「森・濱田松本法律事務所」は、その規模の大きさから、国内で「4大法律事務所」といわれます。
近年になって規模を急拡大させている「TMI法律事務所」も加えて、「5大法律事務所」と呼ばれることもあります。
大阪でも100名を超える弁護士を擁する法律事務所がありますし、そのほかの地方都市では10人以上の弁護士が所属していれば「大手」とみなされることが多いようです。
大手事務所の特徴は、良くも悪くも「組織で動く」ことが重要視される点です。仕事内容は、企業法務や国際法務がメインとなります。ひとつの案件で動く金額は巨額で、多くの人々が絡んでおり、ひとつのミスが命取りになる場合もありえます。個人の離婚や借金問題、刑事事件などを受任する機会は少ない傾向があります。
所属する弁護士は、それぞれで得意分野や専門分野をもっていることが多く、チームで協力し合いながら、強みを活かし合い、苦手を補い合いつつ、大きな案件を進めていきます。
もっとも、「組織で動く」とはいえ、一般企業の従業員に比べれば、個人の裁量判断で仕事を進められる自由が認められています。
ただし、若手の頃には、契約書チェックやM&Aのデューデリジェンスなどで、大量の仕事をこなさなければならない実働部隊となることを余儀なくされます。かなりの激務ですので、事務処理能力の高さだけでなく、その業務量に耐えられるだけの体力も求められます。しかし、待遇は一般よりも良く、1年目から年収1000万円を超えることも珍しいケースではありません。
個人事務所の特徴
一方で、個人経営の法律事務所の場合は、そのボス弁護士の個性が、職場の雰囲気を大きく左右します。仕事を手取り足取り教えてくれることもあれば、まったく教えてくれないこともあるでしょう。クライアントを獲得するのはボス弁の仕事だと心得ている個人事務所もあれば、アソシエイトに対して自分の仕事は自分で取るように求めるところもあります。
競争の激しい大手事務所よりは、自分のペースで仕事を進められる余地が大きいでしょうし、転職も大手事務所と比べれば難しくありません。ただ、個人事務所で幸せに働くにあたっては、ボス弁護士を尊敬できるか、ついていきたいと思えるかが重要なファクターとなります。
仕事内容としては、個人の借金・離婚・交通事故・刑事事件などを幅広く受け付ける場合が多いでしょう。いかにも「弁護士らしい」仕事を現場で覚えたいなら、個人法律事務所が適しています。
中小企業の顧問を多く務めている事務所であれば、経営が安定しやすいですが、個人のクライアントが中心の事務所では経営が安定しづらく、集客に苦労する可能性があります。
近年注目される「ブティック型」事務所
東京や大阪などの大都市部で増えているのが、専門性が高く、少数精鋭の弁護士が所属する「ブティック型」といわれる法律事務所です。
個人事務所のように、どんな事件で受任するわけではなく、「知的財産権専門」「IT事件専門」など、あるジャンルに特化した運営が行われています。所属する弁護士数の規模としては、数名から20名程度がほとんどです。
弁護士のタイプ別 キャリアの考え方
特定の専門分野で活動したいと思っている弁護士は、大手事務所やブティック事務所への転職を目指すといいでしょう。しかし、弁護士であれば誰でも門戸が開かれているわけではなく、それ相応の高い知識と業務能力を求められます。転職活動では、多くのライバルと競争しなければならないかもしれません。
一方で、特に弁護士業務に対してのこだわりがなく、マイペースでバランスよく働きたい場合は、個人経営の法律事務所のほうが融通が利くでしょう。ボス弁に気に入られさえすれば、即採用となる可能性もあるので、ボス弁との相性がキーポイントになります。
弁護士として高収入を得たい、社会的に認められたいと野心があれば、大手事務所、それも「4大」「5大」といわれる有名法律事務所への転職を果敢に目指してみましょう。各事務所で数百名の弁護士を擁していますが、全部合わせても、全弁護士人口の数%にしかなりませんので、企業法務への対応力や語学力などが卓越している、選び抜かれた人材しか採用されません。
個人事務所であれば、裁量権をもって働ける自由度も高くなる可能性があります。しかし、やはりボス弁の個性が働きやすさや職場の雰囲気を大きく左右します。過干渉の傾向がある世話好きのボス弁のもとで働くのは、自由度が下がって窮屈に感じる弁護士もいるでしょうが、一方でフォローが充実していて安心して働けると感じる弁護士もいることでしょう。
まとめ
大手事務所でも、個人事務所でも、弁護士に対して社会から求められ、期待される価値は変わりません。問題は、あなた自身に適性があり、心が満たされた状態で仕事ができるかどうかです。好待遇や社会的地位ばかりを見ずに、後悔しないキャリアを重ねていただきたいと願います。
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