【コラム】 「お・も・て・な・し」饅頭を作ったら裁判沙汰!?

【コラム】 「お・も・て・な・し」饅頭を作ったら裁判沙汰!?

2013/10/17

2020年の東京五輪招致が決まって1カ月が経ち、当初のフィーバーも少し落ち着いてきたようだ。それでも今年の10大ニュースでトップになるのは間違いなく、恒例の流行語大賞が発表される12月には、再び盛り上がりの様相を見せるだろう。今年の流行語大賞レースは近年にないデッドヒートの様相。「今でしょ!」「じぇじぇ」「倍返し」などが一世を風靡する中、IOC総会の招致プレゼンで滝川クリステルさんが披露した「お・も・て・な・し」が、強力なライバルを押しのけてトップに浮上したという見方が出ている。

しかし一連の熱狂も、結婚に例えれば、今はまだ、プロポーズをしてまだ相手のOKをもらったばかりのようなものだ。新居の手続きや式・披露宴の準備など"本番"に向けた実務的な現実を目の当たりにすると、熱狂からさめて我に返ることもあるだろう(笑)。五輪招致のメリットとして、東京都が弾き出した3兆円に見られるように推進派は経済効果を挙げてきたが、安直な便乗商法は禁止されている。たとえば街の和菓子屋が「オリンピックまんじゅう」のようなものを勝手に売り出すなら、JOCが登録している「オリンピック」商標に抵触する。

「オリンピック」のような"ど真ん中"の直球表現だけが制限されているわけではない。「やったぞ東京」「祝東京決定」「目指せ金メダル!」などの表現を商用利用することについても、JOCの見解は「アウト」らしい。堂々と五輪マークを使いたいなら、億単位の協賛金を支払うしかないが、経営体力のある大企業でも原則、一業種一社との契約にしているので、競合が既にスポンサーになっていれば、参入できない。そのあたり、IOCやJOCとは"知恵比べ"のような状態が繰り広げられる。五輪招致決定後、スポンサーではないナイキのネット広告はなかなか見せてくれた。キャッチコピーは「七年後、どんなきみになるかは、今日のきみが決める。きみはどうなりたい?」。JOCのマーケティング担当者も苦笑いというところだろう。

それでもJOCがアウトと判断すれば、該当企業には警告書が送り付けられ、不正競争防止法などを根拠にお叱りを受けることになる。もっとも、この段階ならイエローカード。レッドカードはガチンコの裁判闘争だ。しかし、弁護士や弁理士などの専門家の中には、何をもってその表現がアウトなのか、グレーゾーンが曖昧だとしてJOCが神経をとがらせることに異論を持つ人もいるようだ。滝川さんの「お・も・て・な・し」という言葉は五輪の関連といえなくもないが、一般的なおもてなしと解することも可能だ。

ロンドン五輪開催を決めたイギリスでは、2006年に時限立法の「ロンドン五輪法」を制定。組織委員会やスポンサーの権利保護を強化する姿勢を明確に打ち出した。おそらくIOCから日本政府に対しても同様の法律を作るように働きかけてくるかもしれない。もし厳格な「東京五輪法」ができれば、「お・も・て・な・し」の解釈にも網がかかり、「お・も・て・な・し饅頭」は一発アウト、法廷闘争に持ち込んでも業者側が敗訴する可能性が高くなるだろう。

商用利用のブログなどでも気軽に「オリンピック」といった言葉をつかえなくなる恐れもある。「言葉狩り」ともいえる過剰な規制は大会の盛り上がりに水を差しかねないだろう。ただ、五輪のスポンサー権利を保護しているのは、ロス五輪以降、企業からの協賛金で大会を支えてきた歴史的経緯もある。税金主体の運営で大赤字に終わった1976年のモントリオール五輪は、その後約30年に渡り、住民は返済のための増税に苦しんだ。税金による大会運営で様々なリスクを回避できると考えるなら、五輪便乗商法の禁止はその代償にも思える。ただ、言葉を紡いで飯を食っている者としては正直割り切るのは容易ではない。

(文/新田哲史=コラムニスト、記事提供/株式会社エスタイル)

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